4年前の話です。ネパ―ルから、初めて日本へ来た頃の話です。

午前中は日本語学校に通い、他の時間はアルバイトに当てていました。働いていたところは、住んでいる所から自転車で15分ぐらいかかるところ。ある日の午後、私は14:30から始まるシフトに間に合うように、14:00に家から出ました。

急に雨が降ってきました。自転車をもの凄いスピードでこぎ、急いでアルバイト先にへ向かいました。ところが、アルバイト先に着いて、ポケットを確認すると、財布が無くなっていました。「どこで落としたんだろう?」 ― 私は気が動転して、仕事中ずっと心配していました。そのせいで、仕事でも失敗してしまいました。本当に仕事に集中できなかったので、社員の人に相談すると、「帰る時に、近くの交番に聞いてみなよ」と教えてもらいました。それで、仕事が終わってすぐに交番へ行きました。

交番に着くと、お巡りさんは、とても優しく、丁寧に聞いてくれました。そして、なんと、「財布が届いているよ」と、言ってくれたのです。何という幸運でしょう。財部に入っていたお金やクレジットカードも無事でした。他の物も全部ありました。何も無くなっていませんでした。

お巡りさんによると、その財布は10歳の日本人の男の子が 見つけて交番に届けてくれたというのです。私は感激して、「是非お礼がしたい」と言って、その10歳の子の連絡先を聞いたのですが、お巡りさんは教えてくれませんでした。

私自身の人生の中で、あの時、10歳の子に、お礼を直接言えなかったことが、とても心残りです。財布を届けてくれた男の子、日本語が下手な僕の話を一生懸命聞いてくれたお巡りさん。日本人は、心が暖かくて、親切な気持ちの人がとても多いと思いました。