「橋名板(きょうめいばん)」って、知っていますか? 「橋名板」というのは、「橋の名前」を書き記した板のことを言うのですが、じつは、この「橋の名前」の付け方にはルールがあるんです。ほとんどの日本人が知らないんじゃないでしょうか。
日本の「橋」には、平仮名と漢字の「橋名」が表示されているのですが、「橋名」をひらがなですべて表す場合は、「濁点」ではなくなるんです。「〇〇〇〇橋」の場合は、「〇〇〇〇はし」 になるんですね。要するに、「心斎橋」は、皆さんから 「しんさいばし」 と呼ばれているのですが、「橋名板」には、「しんさいはし」と書いてあるんです。知っていましたか?
「はしっこを歩いてほしいから」とか、「高橋という名前を 『たかばし』と呼ばないようにするため」などという回答は間違いです。じつは、この「橋名板」には、日本人の優しさが隠されているのですが、その理由について、お分かりですか?
普通には濁点のついた 「〇〇〇〇ばし」と呼ぶのだけれども、「橋名板」に 濁りなく、「〇〇〇〇はし」とする理由は、なんと、「済んだ川が濁らないようにしよう」という思いから、濁点を入れないというのです(『岡山の親柱と高欄』渡邉隆男著 日本文教出版 2002)。
日本人の奥ゆかしい一面が垣間見えるエピソードではないでしょうか。